俺には彼女がいない。いなくても頑張れる。俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった。そんな時に出会ったのがAR対応スマホだ、なんという尊い愛機なのだろう。
これから自室に閉じこもり孤独に耐えた日々に別れを告げる。そうこのアプリさえ起動すれば……すべてが終わるのさ。おっと、その前にこれだけは言わせてもらおう「カメラの許可」が必要だ。絶対だ。スクリーンが漆黒の闇に未来などはない。だからと言って星1レビューは禁物。その前に[設定]から[ARBugs]でカメラのアクセスを許可してほしい。
時間だ。掴みたいものがある震える手で「ARBugs」のアイコンをタップした。フェードインするかっこいいUnityのロゴ。いつもお世話になっております。そしてカメラは暗く薄汚れ散らかった部屋を映し出す。俺の部屋じゃないか。端末をこの手に掲げゆっくりと旋回させると部屋の中央の僅かな隙間に黄色いマーカーが表示された。クックック……ここが平面だ。この平面をタップすれば…タップしちゃっていいの？……タップしちゃうからね。さあ皆で声を合わせ呼ぼうではないか「召喚！」
身長158cm相当の彼女が足元から俺の部屋に誘われる。次の瞬間。俺はその場に立ち尽くした。このアプリは立って遊んでください。面倒臭がらないで。
「か……囲われている……」
なんということだ。まるでゲームアプリではないか。彼女の周囲を綿密に隈無く調べて分かったことは同種のオブジェクトがペアになっていること。よくある話だ。マッチするものをタップしていけば良いのだ。そうだったのだ。このアプリの掲載カテゴリは「ゲーム - パズル」なのである。そしてアプリの日本語版ローカリゼーションタイトルを最後にお伝えしておこう。
「ARで彼女を召喚したら囲われてたので助けた」
幸運を祈る！